企業活動にともない日々発生する産業廃棄物。もし廃棄物の処理の実務を担当するとなったら、しっかりと廃棄物処理法を理解する必要があります。
廃棄物処理法では、ゴミは処理業者に頼めば終わりではなく、きちんと処分が終わるまでゴミを出した企業に責任がおよぶものであり、しかも違反時の罰則がとても厳しいのです。
一方、いきなり法律を読んでも、理解するのが難しいのがこの法律の厄介のところです。
そこで今回は、行政職員として廃棄物処理の許認可の事務をしていた私が、効率よく、きちんと理解できるおすすめの本をご紹介します。複雑で難解な法律を最短ルートで攻略してください。
【エントリー】廃棄物の処理はこの一冊から!
はじめの一歩は、法律の趣旨や全体像の把握が重要です。体系的に学ぶにはネットより専門書です。
図解入門ビジネス 最新 産廃処理の基本と仕組みがよ~くわかる本[第3版]
元県庁職員で行政書士の尾上雅典さんが書かれた本です。図解が多く、初めて読むにはちょうどいい本です。
「産業廃棄物とは?」「処理の流れは?」「処理業者の選び方は?」など、基本的なことがやさしく解説されています。2018年に発売されたため、最新の法改正には対応していませんが、基本を理解するには十分です。
廃棄物関係の書籍の中では間違いなく売れている本です。
【ベーシック】廃棄物処理の実務担当者
企業の廃棄物処理の実務を担う場合、運用できるまで理解しなければなりません。
ただ、法律の条文はわかりにくく難解で、読んでも解釈が難しいです。しかし、廃棄物を排出するだけの一般的な企業に直接関係するのは法律の一部だけです。最初から全部を理解する必要はありません。
そこでおすすめは、専門家が実務者のためにポイントだけを解説した本です。わかりやすい文章で、根拠も示してあり、効率よく学べます。
いちからわかる 廃棄物処理法
この本は、元環境省水大気環境局長で、早稲田大学で環境法の講師を務めた経験もある鷺坂長美さんが書かれた本です。廃棄物処理法を所管する環境省の元役人が著した本なので、信頼性は高いです。
基本的な廃棄物処理の解説はもちろん、「もし法律違反をしたらどうなるか?」「なぜ誤った対応が発生するのか?」など、リアルな部分に踏み込んだ内容が書かれています。
出版元も「ぎょうせい」であり、公式本に近い感じですね。おすすめです。
これは廃棄物?だれが事業者?お答えします! 廃棄物処理(改訂第3版)
こちらは、公益社団法人大阪府産業廃棄物協会事務局次長の龍野浩一さんが書かれた本です。
廃棄物の基本から、実務担当者が直面する日常的な業務課題をQ&A形式で解説されています。実務者目線で書かれたわかりやすい一冊です。私も現役時代は参考にしてました。
【プロフェッショナル】実務の責任者、廃棄物処理業者
さて、実務に支障がでない程度に理解が進んだら、ここからがスタートです。当然ですが、法律を理解するには、法律や通知の原文を読んで理解するのが原則です。
また、これからも法令等の改正は行われます。さらに、過去の改正時に出された「通知」が山のように存在します。通知には、法律には書かれていない「国の解釈」が書かれていることが多く、法律を正確に運用するためにはきちんと理解しておく必要があります。
「知らなかった」が通用しないのが法律の怖いところです。
通知はネット上にありますが、一から目を通すのはなかなか大変です。重要な通知は限られていますので、優先順位をつけながら押さえるべきところを押さえていくのが大切です。
そこで以下の本をおすすめします。私も現役の時は、辞書のように使っていました。必ず役立ちます。
廃棄物処理法令 (三段対照) ・ 通知集 令和5年版
法律・政令・規則の各条文が同じページに3段で記載され、比較しやすく見やすいのが特徴です。法律って、「法〇条にあるとおり」など、関係する条文を見つけるのが面倒ですよね。それを解消しくれます。また過去の通知がまとめられているのも特徴です。
公務員時代の私の職場では、一人一冊持っていた本で、私も周りの職員も辞書のように使っていました。値段は5,000円以上しますが、法令違反を防げると思えれば安いのではないでしょうか。
廃棄物処理法の重要通知と法令対応 改訂版
こちらの本は、元山形県職員のBUNさんと行政書士の尾上雅典さんの共著です。BUNさんは、この業界では有名人です。廃棄物処理法を熟知しており、環境省の講演などにもよく呼ばれています。
その方々による選りすぐりの重要通知がまとめられた一冊です。絶対に外せない通知が選ばれています。まずはこの本で通知を攻略してください。
【番外編】はじめて法律に触れる方はこちらも
元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術 [改訂第4版]
法律を読んだり、学んだりするには「技術」が必要です。いままで法律に触れたことがない人は、まずはこの技術を身につけてください。法律を読む「辛さ」や「間違い」が解消されるはずです。
こちらの本は、元法制局キャリアの方が著した本で、シリーズ累計17万部も売れた人気の本です。私もこの本を読んだときは、もっと早くから読んでおけばよかったと後悔しました。わかりやすいです。
図解でわかる! 環境法・条例―基本のキ― 改訂2版
こちらは廃棄物処理法だけでなく環境法全般のポイントが書かれた本です。
環境法の仕組みは、実はどれも似ている部分があり、まとめて理解した方が効率的です。環境法の簡単な読み方についても解説されており、非常に参考になりました。
以上、レベル別の廃棄物処理法のおすすめの本のご紹介でした。参考になれば幸いです。