3 廃棄物処理法の「読み方」とは?

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1 法律のキホン

法律を読むにあたっての最低限のルールを3つお伝えします。

条・項・号

法律をみると「第〇条」と書かれた条文があります(図中の赤色)。

また1つの条文の中に数字(1,2,3…)で書かれたものが「項」です(図中の青色)。
なお、第1項は省略されます。

さらに漢数字(一,二,三…)で書かれたものが「号」です(図中の黄緑色)。

さらに号の内容を細かく書かれたものに「イ、ロ、ハ…」があり、さらに細かくなると「(1)、(2)、(3)…」となります。

この「条・項・号」の示す数字がどこを差しているのかは、必ず覚えておいてください。
なぜなら、条文の中でよく「第〇条第〇項において」という表現があるからです。

廃棄物処理法 第2条(抜粋)

政令と環境省令

次に覚える必要があるのが、「政令」「環境省令」です。

詳細は、前回の記事でお伝えした通りですが、それぞれ次のことを指しています。

「 政 令 」・・・廃棄物処理法施行令
「環境省令」・・・廃棄物処理法施行規則

これらも法律の条文の中でよく出てきますので、どこを指しているかわかる必要があります。

具体例を記載します。以下、廃棄物処理法の第2条第4項第1号の規定です。

(廃棄物処理法 第2条)
4 この法律において「産業廃棄物」とは、次に掲げる廃棄物をいう。
一 事業活動に伴つて生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物

ここでいう「政令」とは廃棄物処理法施行令のことであり、具体的に探してみると以下の部分になります。

(廃棄物処理法施行令 第2条)
第二条 法第二条第四項第一号の政令で定める廃棄物は、次のとおりとする。
一 紙くず(建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)、パルプ、紙又は紙加工品の製造業、新聞業(新聞巻取紙を使用して印刷発行を行うものに限る。)、出版業(印刷出版を行うものに限る。)、製本業及び印刷物加工業に係るもの並びにポリ塩化ビフェニルが塗布され、又は染み込んだものに限る。
<<以下省略>>

廃棄物処理法施行令の第2条を見ると該当する部分がありました。

ここでは第1号のみ記載しますが、実際は第13号まであります。

廃棄物処理法の第2条第4項第1号にあった「政令に定める廃棄物」とは、この第1~13号のことを指しているのです。

このように法律を読み解く際には、「政令」「環境省令」を行ったり来たりしながら、読み進めていく必要があります。

公布と施行

こちらも覚えておかなければならない重要な法律用語です。

特に重要な場面は、法律などが改正されたときです。
改正されたら「すぐスタート!」だと、対応する準備もなくなってしまいます。

よって法律などが新しくできたり、改正されたら、まず国民に広く知らしめるよう「公布」されるのです。

公布のあと「では実際には、この日からスタートします」というのが「施行」になります。

つまり、

「公布」・・・成立した法律を国民にお知らせすること
「施行」・・・法律の効力が実際に発動すること

したがって、法律などの効力が生まれる日は「施行日」ということを覚えておいてください。
なお、公布日と施行日が同日のこともあるので要注意です。

2 簡単に読めるようになるコツ

次は簡単に読めるようになるコツを紹介します。

法律自体慣れていない人にとっては、廃棄物処理法はかなり難解だと思います。
「なぜ、こんなに難しい日本語なのか?」と思ってしまうかもしれません。

そこで私の考えた攻略法をお伝えしますね。

まずは見出しで当たりをつける

条文の頭にある「見出し」を見てください。
ここで何を規定しているものか概要をつかむことが大切です。

条文を読む前に、まずは見出しを確認すること。

他にも、見出しは条文をスピーディに探す時にも役立つので覚えておいてください。

主語と述語を押さえて分解する

まずはこの条文をお読みください。

(事業者の処理)
第十二条 事業者は、自らその産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。第五項から第七項までを除き、以下この条において同じ。)の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準(当該基準において海洋を投入処分の場所とすることができる産業廃棄物を定めた場合における当該産業廃棄物にあつては、その投入の場所及び方法が海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律に基づき定められた場合におけるその投入の場所及び方法に関する基準を除く。以下「産業廃棄物処理基準」という。)に従わなければならない。

どうでしょうか?どれくらい頭に入りましたか?
とにかく一つの文が長いですよね。。。

こんな時は、一度「主語」と「述語」に分解してみることをおすすめします。

この第12条第1項の主語は「事業者」です。一方、述語は「従わなければならない」ですよね。
もし紙ベースで読む場合は、下線を引いておくといいかもしれません。

そうすると、次に「何を従わなければならないのか?」と思えるはずです。

条文中を探すと、
「政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準(産業廃棄物処理基準)」
に従わなければならないことがわかります。
(該当する「政令」を見れば、基準の内容がわかります)

さらに「どんな場合に?」となると思うので、条文中を探します。
すると「自らその産業廃棄物の運搬又は処分を行う場合」ということがわかると思います。

(事業者の処理)
第十二条 事業者は自らその産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。第五項から第七項までを除き、以下この条において同じ。)の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準(当該基準において海洋を投入処分の場所とすることができる産業廃棄物を定めた場合における当該産業廃棄物にあつては、その投入の場所及び方法が海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律に基づき定められた場合におけるその投入の場所及び方法に関する基準を除く。以下「産業廃棄物処理基準」という。)に従わなければならない。

あなたは「事業者」
廃棄物処理法に出てくる主語は何種類かに限定されます。本サイトで対象とする「一般的な企業の方」に該当するのは「事業者」になります。つまり、条文で「事業者は~」という部分が自分に関連するところというわけです。また、「排出事業者」と記載されている部分もあります。ほかにも「何人も」などが主語の場合は、誰もが該当します。

カッコ内は一旦置いておく

条文中に”( )”カッコがよく出てきますが、これがとにかく長い!
さらにカッコの中にカッコがあったりと、わけがわからなくなる要因の一つです。 

その場合、まずはカッコ内を気にせず読むようにすると、条文の意図がつかみやすくなります。

【原文(カッコあり)】

(事業者の処理)
第十二条 事業者は、自らその産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。第五項から第七項までを除き、以下この条において同じ。)の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準(当該基準において海洋を投入処分の場所とすることができる産業廃棄物を定めた場合における当該産業廃棄物にあつては、その投入の場所及び方法が海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律に基づき定められた場合におけるその投入の場所及び方法に関する基準を除く。以下「産業廃棄物処理基準」という。)に従わなければならない。

【カッコなしバージョン】

(事業者の処理)
第十二条 事業者は、自らその産業廃棄物🔳の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準🔳に従わなければならない。

🔳がカッコ内の文章がある箇所になります。

どうでしょうか?大分スッキリしましたよね。

実際に読むときは、例えば鉛筆(消せるもの)でカッコ内に線を書いて読むのもいいかもしれません。

カッコ内は、除外するものなど特定の要件を規定したり、言葉の定義を規定するケースが多いです。
条文の意図がつかめた後、カッコ内もきちんと読んで理解してください。

「ただし書き」とは何か

条文の中には、以下のとおり「ただし~」という表現がよく出てきます。

(廃棄物処理 第12条)
8 その事業活動に伴い特別管理産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者は、当該事業場ごとに、当該事業場に係る当該特別管理産業廃棄物の処理に関する業務を適切に行わせるため、特別管理産業廃棄物管理責任者を置かなければならない。ただし、自ら特別管理産業廃棄物管理責任者となる事業場については、この限りでない。

これを「ただし書き」といいます。
ただし書きとは、前文(ただし~より前にある文)に対し、除外や例外、注意などを規定するものです。

「ただし書きって何?」とならないよう、覚えておくといいと思います。

複数回読む

一度読んでわかりにくい条文は、複数回読むことをおススメします。

1回目より2回目、2回目より3回目読むと、不思議なものでだんだんと脳が慣れてくるのです。
実際に、私が行政にいた頃は上司から「とにかく何十回も読め」と言われました。

実は調べてみると、7回目あたりから自然に脳内に定着し始めるそうでう。
遠回りに見えて実は一番効率が良い方法なので試してみてください。

まとめ

以上、法律を読む基本ルールと簡単に読めるコツをお伝えしました。

何でもそうですが、「知らないこと」に取り組むことはパワーが必要です。
しかし、こうして取り組み方を知れば、武器を携えたかのようにパワーが身についたと思います。

以下にまとめますので、参考になれば幸いです。

・条文は、「条・項・号」からなり、どこを指すのかわかるようになる必要がある
・「政令」とは施行令、「環境省令」とは施行規則などを指す
・「公布」された後、「施行」されて法律などの効力が発動する
・条文を読む際は、まずは「見出し」を見て内容をイメージする
・長い条文は、主語と述語押さえて、文章を分解する
・カッコ内は一旦置いておき、条文の意図をつかむ
・「ただし書き」とは除外や例外、注意事項などを規定したもの
・複数回読むことで自然に脳に定着する

【執筆者 プロフィール】
元技術系公務員のフリーライター。大手製造業で開発業務を経て、公務員の技術職へ。水質汚濁防止法や廃棄物処理法の担当者として、多くの事業場に立入検査や届出審査を行ってきた。公害防止管理者(水質第1種)、廃棄物処理施設技術管理者などの資格を保有。現在は、ライターに転向し、ビジネス系のWEBメディアや製造業者のWEBサイトなどの記事を執筆中。

元行政職員。主に環境行政を担当し、環境法令に基づく届出や許認可の審査、また年間100社以上の工場や事業場への立入検査をしてきた実務経験があります。公害防止管理者などの国家資格有り。環境法令について、実務を担う方などがわかりやすく学べるようやさしく解説しています。

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